『WAIS-Ⅲ 成人知能検査』を受けたときの話。

発達障害

 こんにちは。今日は僕がWAIS-Ⅲを受けたときの話をしたいと思います。

WAIS-Ⅲって?

 WAIS-Ⅲ、読み方は「ウェイス・スリー」。16歳以上の人向けに作られた発達検査のひとつです。

 2018年3月に改訂版のWAIS-IVが出たのですが、僕は2018年2月に受けたのでⅢでした。

 この検査は医師の指示がないと受けられないもので、僕は精神科でこれを受けました。

 WAISは、簡単に言うと『大別して3つのIQを調べられて、さらに細かく分野を分けることで得意不得意を色んな面から調べられる』という検査です。詳しくは日本文化科学社のホームページに書いてありますが、少し難しい文章なので検査を受けなければ良くわからないかもしれないです。↓日本文化科学社のホームページ

心理検査の専門出版社 日本文化科学社

 この検査はIQを調べることだけが目的というわけではないそうです。事前に困っていることを聞いて、IQと照らして対処策や改善法を考えることに役立てると臨床心理士さんはおっしゃっていました。

 考えてみればその通りですよね。IQがわかったところで困りごとが解決するわけじゃない。大切なのは、何が不得意なのか理解して補う方法を考えることです。

どうして検査することになったの?

 ここからは、僕がどうして検査を受けることになったのか、その経緯について書いていきます。

高校生までのこと

 僕はもともと、環境の変化が苦手でした。

 中学入学から1か月ほど経ったころ、毎朝の吐き気と微熱、そして涙が零れ学校に行きたくないと全身が訴えてくる状態が続きました。そのときは母が半ば無理やり家から追い出していたので不登校になることはありませんでしたが、あそこで折れていたらもう学校には通えていなかったでしょう。

 (誤解を招きそうなので言っておきますが、母が家から追い出したことは僕にとってマイナスではありませんでした。学校にたどり着いてさえしまえば何も憂鬱なことはなく、楽しく過ごすことはできていました)

 高校生のときは新しい友人がほとんどできず、中学からの友人とばかりすごしていたからかあまり憂鬱になることはありませんでした。その中学の友人たちと同じクラスになることは一切なかったため常に暗い気持ちではありましたが、感情の波が少ない分楽ではありました。

挫折した大学のこと

 そして、大学に入り、ここで僕のハンディキャップが突然大きな壁となってたちはだかってきたのです。と言っても、発達障害の可能性があることを知って初めて、あれはハンディキャップだったのかもしれないと思うようになったのですが。

 大学入学当初はやはり環境に慣れず、毎月1回は熱を出したり部活に行けないことがあったりしたのですが、それらはさほど大きな問題ではありませんでした。

 僕が進学したのは国立大学です。これは推測にすぎませんが、国公立大学は私立や専門学校に比べ『課題』というものが少ない印象です。少なくとも僕の学部学科では毎週の課題は少なく、学期末のレポートや試験が評価基準になることがほとんどでした。

 要するに、小中高と続いた「ワーク」や「ドリル」がほとんどの科目でなくなったのです。勉強方法は、自習と過去問がほとんど全てです。(僕の専攻で回っていた過去問には答えがついていないものが多く、答えは自力で教科書や授業プリントから探し出す必要がありました)

 このワークやドリルが消えたことが、大きな壁となりました。

 『自習』と言われたら、やり方はいくらでも思いつきますよね?教科書を読む、ノートをまとめ直す、過去問を解くなど、自分で時間を見つけてコツコツやれば良い話です。

 しかし僕にはそれができませんでした。

 なぜできないのか、僕はずっと「自習と言われても何をやったらいいのかわからない」と思っていました。上記のように書き連ねることはできるので、思いつかないというわけではないんです。でも、何をやったらいいかわからない。

 どうしてだろうとしっかり向き合って考えてみた結果、「どの内容の何から手を付けたら良いのか決められない」という結論に落ち着きました。

 苦手な分野、大切だと言われたところを重点的にやればいいじゃないかと思いませんか?僕は思います。でも、できないんです。どれかひとつを選ぶこと、やる順番ややる量に優劣をつけることができない。結果的に、何もできないまま時間だけが過ぎていってしまいます。

 では、頭からコツコツとやっていけば良いのではないか?そうも思います。けれど、これもできませんでした。発達障害の特徴のひとつに「一度没頭してしまうと周りが見えなくなる」というものがあります。もちろんすべての人がそうだというわけではありませんが。

 「〇時になったら勉強を始めよう」と思って他事をやり始めたら最後、ふと気づいたらお風呂にも入っていないのに寝る時間なんてこともザラにあります。(これに関しては思い立った時にペンを握れない自分の甘さもあるのですが……)

 僕の一日のサイクルに自習、勉強の時間はありませんでした。ルーティンを崩されることを嫌う僕には、そこに自習を入れることはできませんでした。

 結果的に僕は大学の講義についていけなくなり、専門科目では再試を重ね、ついには大学へ行けなくなりました。今度は中学のように強制的に家から追い出されることはなく、そのまま半年不登校を続けて翌年度は休学しました。その年度の最後、2019年3月に僕は国立大学を退学しました。

ちょっと余談

 話は変わりますが、国立に入ることができたということは、僕は高校まで『お勉強』ができる子でした。「課題」というものは「やらなくてはならないもの」とインプットされているため、自称進学校の膨大な課題をすべてこなしていました。課題の反復運動が功を奏して、自習をせずとも習ったことは覚えられたのです。まあ、興味のなかった社会科に関しては赤点常習者でしたが……

 赤点常習の科目がある一方で生物は1位を何度も取っていたのも、今思えば興味の差が激しい発達障害の特徴のひとつだったのかもしれませんね。興味があること、好きなことにはとことん没頭できる、そういう性格だと自己分析しています。

心療内科に行くことを決心した出来事

 僕は不登校になった後、ずっと続けているバイトとの掛け持ちでバーでのアルバイトをはじめました。バーテンダーになりたい気持ちは中学からのものでした。

 しかしここで、精神科に行く決心をする出来事が起こってしまったのです。

 僕が応募したところは、席数が50席もあるバーの中では大規模なお店でした。規模が大きいということは、オーダーがかさみます。お客様からオーダーをいただいてそれをキッチンに伝えに行く途中で、「これ流しに持って行って」と鉄板を渡されたとき、僕は停止しました。比喩表現ではなく、頭も体も停止したのです。

 『キッチンにオーダーを通す』という作業の間に突然挟まれた『鉄板を持って行く』という作業、「鉄板を持ったままオーダーを通して、その後鉄板を置けばいいんじゃないの?」と、冷静になった頭では理解しています。

 けれど、働いている僕にはできませんでした。どちらを先にやれば良いのか判断できなかったのです。

 最終的に「早くして」と言われて思考が再開し、どうにか両方やることはできましたが、一瞬の停止が大きなわだかまりとなって頭に残りました。

 その失敗がいつまでも残っていたそんな矢先に、友人がバイト先にいる発達障害者の話を僕の前でしはじめました。詳しくは割愛しますが、どれもこれも、身に覚えがあることでした。

 学校にも行けずバイトもできず気分が落ち込んでいた僕は、近いうちにうつ病を疑って精神科に行こうとは思っていました。そこに飛び込んできた発達障害。どちらも精神科が専門となれば、早く行って楽になりたいと思うのは当然のことでした。

 精神科に電話をしたのは2017年12月上旬。下旬に初めての診察を受けることになりました。

 問診票をを書き、しばらく待って診察室へ。困っていることには「気分が落ち込んですぐ泣いてしまう」、時期には「環境が変わると悪くなってしばらくする少し良くなる」などと書いたように思います。

 「家族の中に精神科にかかったことがある人は?」「友達は多い方?」と、たぶん4つくらい質問をされただけだったと思います。

 『発達障害の可能性があるね

 えっ、そこにたどり着くの早くない? そう思わずにはいられませんでした。結局どこを見てそう思ったのかはわかりませんが、話すときの視線や手の動きが他の人と違う自覚はあるのでそういったところからも判断されていたのかもしれませんね。

 簡易検査の結果は陽性。3月くらいまで待てばうちで詳しい検査を受けられるけどという言葉に「受けたいです」と即座に返事をしました。きちんおわかるなら詳しく数値や文面で見たいと思ったのです。

 そうして予約を取って、2018年2月24日に検査を受けました。検査室に入り、臨床心理士の方と挨拶。机の上にあったのがWAIS-Ⅲでした。

WAISの内容と結果

 僕はこの検査を何も調べずに受けました。問題を事前に知ってしまうと検査結果に支障が出る恐れがあるため詳しいことは言えませんが、足りないもの探しをしたり、積み木を並べたり、暗算をしたり、単語の意味を答えたりしました。

 すごく早くほぼ全部やれるものもあれば、どれだけ考えても半分くらいしか解けないものもあって、分野によって差があることが結果を見る前からなんとなくわかって面白かったです。

 結果が出るのには2週間程度かかりました。検査の後診察を受けましたが、「発達障害っぽい特徴を言っている」と先生に言われました。どの発言がそうなのかはわかりませんが、今までの先生の言葉と簡易検査から可能性は濃厚そうでした。

 そして待つこと2週間。結果を聞きに再び病院へ行きました。

 結果結果から言えば、知能面では問題がないとの判定。結果は個人情報なので詳しく述べませんが、全検査IQが116、言語理解、知覚統合は「平均」で、作動記憶、処理速度は「平均より少し高い」と書かれていました。

 トータルで見るとそこまで差が大きいというわけではなく、真ん中より少し高いといった感じでしょうか。90~110が人数としては一番多く、下も上も離れるにつれて人数が減っていくといった感じでした。

 この検査ではIQだけではなく各項目で点数のようなものが出ます。0点から19点まであり、9点~12点が平均とのことです。

 僕はほとんどが11〜13点の間だったのですが、『算数』が17点、『理解』が9点とその二点を見た時だけとんでもなく山と谷がありました。特に算数は紙が出された瞬間にわかるほどの飛び出具合でした。

 算数は臨床心理士さんが口頭で言った算数問題を計算する項目で、理解は……なんだったのでしょう。思い出せないあたり、理解の項目がそもそも理解できていなかったような気がしますね。

 僕が日常において苦しいと感じるのは、この『理解』の項目の低さにあるような気がします。作動能力はあるにもかかわらずそもそもの行動原理ややり方が理解できないから結果的に行動できない。『何もできない』と感じるのはそのせいでしょうか。

 こういったことを考える材料として、WAISはとても良い経験でした。

 先生は当初、感情の起伏が激しい気質だと思うと言っていましたが、今は双極性障害Ⅱ型と言われています。発達障害でもうつ病でもないのにこんなにも感情に波があったら堪らないと思っていたので、そう言われたのは救いでした。

発達障害を理解してほしい

 発達障害は理解されにくい障害のひとつです。明らかに知能に障害があるわけじゃないのに生活が上手くできない人はたくさんいます。「変わり者」と呼ばれる人たちの中には、皆ができることができなくて困っている人もいると思います。

 不得意なことがあるなら誰かが補ってあげれば良い。代わりに得意なことをたくさん任せれば良い。できないことを無理にやるよりできることをたくさん任された方が、僕は存在価値を感じられて嬉しいです。

 もちろん、何度言ってもできないからって「私がやるからもういい、そっちやってて」みたいな突き放したような言い方は辛いです。障害者にだって感情はあります。

 発達障害のカミングアウトは怖いものです。だって差別されるから。それでも表明する人たちがいる意味を考えてみてください。

最後に

 今回はWAIS-Ⅲを受けたときの話について書きました。WAISには子供向けのウィスクラー(綴りは忘れました)もありますので、発達障害かもしれない、そう悩んでいる方やその親御さんには、検査を視野に入れていただければと思います。

 それではまた次の記事で会いましょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました